Shinya talk

     

 

2013/09/16(Mon)

青年の滝のような汗を見た岩国の一日。(CAT WALKより転載)

思うに沖縄の米軍基地は外から見たことはあるが”自衛隊基地”というものに入ったのはこれがはじめてである。

憲法改正が云々されており、自衛隊も常に俎上に上るが、私がそうであるように、実際に自分の目で自衛隊基地を見た日本国民がどの程度いるかというと、ほとんどの国民が、と言ってよいほどその空気に触れた人はいないのではなかろうかと思われる。

そういう意味では多くの国民は”架空の場”を議論の対象にしていると言えなくもない。



岩国といえばあの日本で最も美しい橋と言われる錦帯橋が目に浮かび、その土地の独特の名称とあいまって優雅な歴史を感じさせるお国柄だが、こういったところに基地があるというのは不思議な光景だ。


だがもともと昭和13年あたりから岩国の海岸線には旧日本海軍の航空基地があったわけで、終戦時にアメリカが進駐し、現在米軍海兵隊が管理する日米共同使用の基地となっている。

その海兵隊基地と同居するのが海上自衛隊の第31航空群で、自衛隊基地だけでも陸上780万u、海上2000万uと広大だ。

この第31航空群の第71航空隊に例の勇名を馳せた純国産救難飛行艇US-2が配備されているわけである。



ゲートを入ってみるとそこは実に広大な治外法権地帯(迎えの車の中からの撮影が禁止)。

まずアメリカ人がジョギングをしており(彼らも朝が早い)、なぜか超デブちゃんな女性ばかりが目立ち、英語のサインボードやジョナサンがあったり、まさにアメリカそのもの。ここに自衛隊が同居するわけだが、直感的雰囲気としてはその空気に主従の関係がありありと感じられる。すでに”結婚”して長い年月を経ている夫婦のようなもので、さしずめ米軍は夫、自衛隊は妻というところか。


治外法権地帯”アメリカ”の道路を基地内制限速度の40キロでゆっくりと横断し、やがて地続きの海上自衛隊基地へ(米軍基地と自衛隊基地の間にはゲートもない)。

ここが例の第71航空隊であることはその入域道路の2カ所に鋼鉄製の頑丈な格子が敷かれていることで知れる。

この幅20メートルの見慣れない鋼鉄製の敷物は、その上を車が通るとガタガタと衝撃があり、よくある車のスピードを抑制する装置かと思うとそうではなく、車のタイヤに付着しているゴミや小石を取る、言わば人間の足拭きのようなものだ。

飛行場のある基地内にはゴミひとつ落ちていてはならないのだ(確かに広大な飛行場を歩くと、足元のコンクリートは実に細かい刷毛目の規則正しい撫でたくなるようなサーフェイスである)。


広報の小坂君に案内され記帳所で身分証明書を提示。




小坂君。広報クンらしくなかなか感じがよろしい。




会議室のボード版には過去の海上救難実績のデータ札が無数に貼られている。


たとえば

16・10・4

漁船 第11日光丸

鼻血止まらず

1、 7(1、1)34m

とあるのは平成16年10月4日。漁船名。遭難状態、あるいは病気の症状。波高1、1〜1、7m。波長(波と波の間の距離)34m。

ということである。


ざっと見ると遭難状態、症状は「喘息発作。急性肺炎。気球落水。カジキマグロによる外傷。インフルエンザ。ヨット遭難。急性胃潰瘍。甲板から転落。右目不純物混入。虫垂炎。ガス爆発。腸閉塞。左手挫創。凍傷による体温低下。サメに噛まれ出血。右手親指切断。頸椎損傷。ノルーウエー船と衝突。米艦艇事故。状況を得ず。脳内出血。右膝複雑骨折。両手指切断。心筋梗塞。排尿困難。前立腺肥大。衰弱自力で歩行できず。」とさまざまだ。


辛坊さんもこういった一連の海上遭難救助の一例だが、ネットでは有名人だから海自も頑張ったのではないかといううがった見方をする論調もあったが、このボード板を見ると、軽症と思われるような事例にも真剣に対応しており、のちにそのことを幹部に問うたおり「断じてありえない、私どもはそれが韓国籍であろうと中国籍であろうと日本の漁船であろうと、人命を預かるわけですからいっしょです」としっかりした口調で仰っていた。


それは当然だろう。




ついに威風堂々たる救難飛行艇US−2にお目もじ。

飛行艇の腹はV字型だ。

このV字は一般的な船の船底の形状と同じで、海面に刺さり、波当たりを軽減する。

着水時には上向き6度の角度で入る。

その6度とは飛行艇の腹の後ろ3分の1が海面と平行になるということである。波が高いからと言って機首をさらに上に上げると、後ろ3分の1のV字線が海面と平行を失い、機首がふらつくことになる。

つまりこの飛行艇が3〜4mの波に対応するということは海面に6度の上向き角度で入水した折の機首下と海面の距離が4mということである。

この4mの荒波に対応する救難飛行艇は世界でUS−2のみ。




出発時の点呼と行程発表。

機体 幅33×長33×高10mだが大の男が整列すると狭い。

乗員11名。

指揮官。操縦班。看護衛生班。機器操作班。救助班。など。




コックピットには気の狂いそうなくらいのボタンやスイッチ類が上下左右にある。右が正操縦士、左が副操縦士。




救助オペの目標物が投下される。




着水!




ボートを海上に落とす。

スペースぎりぎりの大きさである。




滝の汗。

働く若者の汗は久方ぶりに見た。




クルーとの記念撮影。

真ん中の女性は整備士。

父親が自衛隊だったのでこの道を選んだのだという。

左はし、メガネの青年が正操縦士。

前の二人は救助員。


人を助けることも日本を守ることのひとつということを学んだ一日だった。/p>

みなさんご苦労さん!!!


 


     

 

2013/09/08(Sun)

オリンピックの功罪の功もあながちないとは言えないが、浮かれ過ぎの自失は要警戒。(Cat Walkより)


私は一昨日、めったに電話をすることのないスペインのマドリッドに住む姪に電話をかけている。



「そちらはどう?」



「何のこと?」



「オリンピックだよ。大きな騒ぎになってるのかな」



「日本は騒いでるの?」



「大変な騒ぎだよ」



「そうなんだ。こっちは何か普通だけど」



「普通って」



「オリンピックの誘致やってるんだ、って程度で、カコなんかオリンピックのこと知らなかったくらいだから」



「えっ、知らない!」



「あまり興味がないから知らないのかも知れないけど、こっちの人って日本人みたいに集団でワッとひとつの方向く感じじゃないから、カコみたいに知らない人もいると思うよ」



カコとは姪の旦那のことである。

40代のバリバリの働き盛りである。



しかしいくらオリンピックに興味がないと言っても、日本のことを思えば候補地のマドリッドに住む人間がオリンピック誘致のことを知らないということには耳を疑った。

そしてあらためて今回の日本のオリンピック誘致の熱狂がすざまじいものだったことに思いが及び、誘致に臨む他の国が日本と同じ状況にあるものと勘違いしているであろう日本人の国際感覚の欠如にも思いを致さなければならないだろう。



思うに今回東京オリンピックの誘致に関して日本のまるで国の命運を賭けたかのような、悲壮感すら漂わせた熱狂は、よくも悪くも東日本大震災や福島問題が関わっていると常々感じていた。



それは今回のオリンピック誘致に対する異様とも言える熱狂と前回の石原都知事時代の誘致に対する国民やマスコミのほどほどの距離感がよくそれを物語っている。



3・11によって日本はまるで国全体が大殺界に入ったがごとき様相を呈した。

一難去って、また袋小路に入ってしまった原発、さらには南海トラフ巨大地震に対する恐怖、洪水、竜巻、と言った追い打ちをかけるような数々の自然災害、陰惨な事件の連続、さらにはハレの世界の花火大会ですら豪雨での中止、ガス爆発による死傷者。



3・11以降の日本のこういった奈落の底的状況がアベノミクスに対するバブル的幻想を生み、そして今回のオリンピック誘致の異様とも言える熱狂を生んだということは否めない。



そして、今回日本が誘致に失敗するということは一種の追い打ちをかける災難のようなものであり、国民の沈んだ気分をさらに沈殿させるだろうと思ってはいた。



そういう意味においてオリンピックの是非はさておいて今回東京オリンピックの誘致を当てたことは”底付き”の状態から気分の上でまがりなりにも浮かび上がることができるだろうということで、よしとすべき面もある。



ただし、今回東京オリンピックが承認されたことによって、原発問題もなかったかのような様相で、これからメデイアに展開するだろう浮かれたようなお祭り騒ぎはいまだ故郷を失い悶々としている福島の人々のことを思うと複雑な思いがある。



そしてまた、余震によって福島の状況が急変する可能性を秘めていることを考えると、7年後にオリンピックが開催できるかどうか完全に保証されたものではないことは念頭に置いておくべきだろう。

     

 

2013/09/07(Sat)

あんた何言ってんの?(Cat Walkより)

今日のトークに関連してのことだが、私たち日本人(就中、オリンピック招致委員会)は今回の外国メディアとのやりとりを勘違いしているところがある。

外国メディアの質問が汚染水問題に集中したのは「東京オリンピックは大丈夫か」ということのみではなく、汚染水が世界の海を汚していることに対する暗黙の”非難”であり、また今後さらに高濃度で海を汚染する可能性のあることに対する恐れの現れと受け取るべきなのだ。

私が海外の人と接触する限りにおいて太平洋で直接繋がった環太平洋諸国のみならず、ヨーロッパでさえ、私たちの想像以上に福島問題にはナーバスになっているのである。

しかし、間接的な被害を受ける可能性がありながら、これまで非難の持って行きどころがなく、悶々としているというのが海外の人々の偽らざる心情ではないかと察する。

そこでたまたまオリンピック開催都市投票で直接日本の代表に質問をする機会に恵まれ、これまでの思いが一気に吹き出したというのが実情ではないか。

その答えが「東京は大丈夫です」ではあんた何言ってんの、ということになるだろう。
恥ずかしい。
その言葉には他者に対する想像力がまったく欠落しているのだ。
いかにも高度成長を走って来た日本人丸出しだ。

猪瀬氏もそうだが、今回のスピーチではまずこの福島問題で世界の皆様に大変迷惑をおかけしている、という謝罪の言葉から入るのが筋であり、そういった謙虚な言葉は放射能汚染を間接的に共有させられつつある海外の人々になんらかの感銘を与えるだろう。

その上において、数値を示し、東京の安全性を強調するというのが順序である。

願わくばこのトークが彼の耳に届いてほしい。

今からでも遅くはない。


     

 

2013/09/07(Sat)

世界言語と日本言語の間に流れる深い川(Cat Walkより転載)

今日は土曜なのでトークは休みだが、オリンピック開催地喧伝に関する日本の対処の仕方の甘さが際立つのでひとこと。



猪瀬知事は会見に先立ち、5日には本番会場で2回目の公式リハーサルを行った。猪瀬知事は「関係者から『ほぼ完璧』と評価された。この勢いで本番に臨みたい」と決意を語った。



と自画自賛しているがその中で



「東京の放射線量はロンドンやニューヨーク、パリと同じ。水も食物も空気も絶対に安全なレベル」と強調するらしい。



東京オリンピック開催に向け東京開催なら参加しないというアスリートもいるように、原発問題がネックになるであろうことは早くから予想されていたことであり、それが最終選考の今現実のものとなっている。



そして今回の一連の報道を見るとそれへの対策、準備があまりにお粗末と言わざるを得ない。



こういった海外の席では言葉は常に実証を伴う必要がある。



「東京の放射線量はロンドンやニューヨーク、パリと同じ。水も食物も空気も絶対に安全なレベル」というアバウトな言葉は実に日本的な情緒言語であり世界には絶対通用しないのである。



世界言語というのは実証があってこそ、説得力を持つという基本的なことに猪瀬都知事および”日本村”の方々は気づいていないようだ。



長い準備期間と莫大な予算があるのだから船長の私なら日本を除外した先進国何カ国かの第三者機関を作り(イギリスのBBCでもよい)、東京、ロンドン、ニューヨーク、パリの4都市の空間放射線量、飲料水の放射線量、食料100品目の放射線量を計り、それをきっちりとした表にしてプレゼンの折に提示する。



その数値が「東京の放射線量はロンドンやニューヨーク、パリと同じ。水も食物も空気も絶対に安全なレベル」という言葉と一致してこそはじめて説得力を持つわけだ。



先に猪瀬都知事は無知なイスラム観を披瀝し、対世界感覚の脆弱を露わにしたが、あの強面を演じる面構えとは裏腹に、原発問題に関する発言は実に日本人的でヤワと言わざるを得ない。


もしこれで東京開催が落ちたら「原発問題が響いた」と言うだろうが本当は「原発問題対策の不備が響いた」と言わなければならないところだ。





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