Shinya talk

     

 

2013/04/15(Mon)

金正恩という若き最高指導者の行動に垣間見えるもの。

このトークではこれまで幾度か北朝鮮に言及している。

今回の北朝鮮ミサイル問題に関連した「アメリカの困ったフェアープレー精神」(4月9日)。

あるいは先年金正日が逝去したおりのアナウンサー報道を茶化す日本人に言及した(2011 12月19日 「パンソリ」)。

あるいは新大久保の排除デモなどに触れた(2013 2月12日)、などだが、トークではかねがね、北朝鮮に関する一方的な報道の在り方や、異質なものを排除する傾向にある、昨今の日本人の北朝鮮に対するいわれのない偏見を正して来た。

そして9日のトークでは金正恩の行動力に青年の覇気を感じるむねの談話をたたためたわけだが、この金正恩という青年に関しては情報が少ないだけにまだまだ評価するに早計で、消化不良である。

今回の北朝鮮問題に絡んでのアメリカ要人の金正恩に関するコメントを聞いても、彼らもまたおっかなびっくり正確な評価に苦しんでいるようなところが見受けられる。

だが数少ない金正恩に関する情報を取捨選択するに、彼の人物像がおぼろに浮かび上がって来るような局面も見受けられるので一言付け加えたい。





そのひとつは彼がかつてのNBA(北米のプロバスケットボールリーグ)の往年のスターであるデニス・ロッドマンを北朝鮮に招待し、一緒にバスケットボールを観戦したり、歓迎会を開いたりし、さらには彼にオバマ宛のメセージを託していることである。

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私の兄は学生時代にバスケットボールをやっていた関係で、旅行会社に勤めていた折にはNBA観戦ツアーを企てるほどNBAファンで、そのお陰(とばっちり)で迷惑なことに私自身もNBAに関する生半可な知識がある。

そんな私の知るデニス・ロッドマンと言えば全身にタトゥーで髪を緑色に染め、女装癖の悪さをもおおっぴらにして隠さないなど、”狂気の◎◎”と名指されるほど、のワルだった。

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身長203cm、体重105kg。

NBA選手としては小柄だ。

彼は80年代から90年代にかけて活躍したディフェンダーであり、92年〜98年に7年連続リバウンド王となっている。

このリバウンドというのはバスケットリングから跳ね返って来たボールを奪い取ることだが、彼は自分でも公言しているが、点を入れることには興味がなく、敵のボールを奪うことに興味があるという”あまのじゃく”なのである。

その”203センチという小さい身長”を逆に利用して機敏な動作とボールが落ちて来るポイントを抜群のセンスで予測し、さまざまな派手なジェスチャーでリバウンドをものし観衆を湧かせた。

バスケットが点を取る競技であるにも関わらず、点数を稼ぐ選手より点を入れることに興味のない彼の方が目立ったというのは彼の立ち位置はマイナーでありながら超メジャーに成り上がったということに他ならない。

金正恩が招待したロッドマンは鼻とか唇にボディピアスをぶら下げた妙に薄汚い出で立ちで、えっこれがロッドマン?と疑うような変わりようだが、そんなことより、私としては金正恩がロッドマンの大ファンであったことの方に抜きさし難い因縁を感じざるを得ない。

スイス留学時代の金正恩はバスケット漬けで、そのころの友人の話ではことバスケットになると口角泡を飛ばし、話の尽きることはなかったという。

その学生時代の金正恩がバスケットをやっていたころのNBA”大やんちゃスター”がロッドマンだったわけだ。

世界の中の超マイナー嫌われ者国家の首領の御曹司がこのロッドマンに傾倒したのはものの理(ことわり)というものだろう。

背の高い人間の林のような中からとつぜん小柄な緑頭の男が現れ、タマをかっさらって点を入れることにより戦況を一変させてしまう。

痛快この上ない。

やんちゃはその付属物のようなものだが、御曹司がやんちゃに憧れるパターンは麻生元総理や小泉元総理を見ればわかることだ。

その意味で金正恩は御曹司キャラクターそのものである。





問題はその彼が境遇の似通ったロッドマンの大のファンだったというようなことではない。

彼がそのロッドマンを北朝鮮に招待したというのは、件の経緯から言ってわかりやすいことだが、彼の政治家としての資質を読むに上において問題なのはこのロッドマンに外交官の役目を託したという訳のわからない彼の挙動である。

ロッドマンは往年のNBAの名選手には違いない。

だが彼は15年前の選手であり、すでにアメリカでは忘れ去られている元選手なのだ。

しかし金正恩の時間は完全に止まっていて、ひどい過去固着に陥っている。

ロッドマン起用は金正恩のパーソナルヒストリーのみに負う時代錯誤のミスキャストに他ならない。

問題は彼が学生時代に”全能の神”として崇めたロッドマンをいまだ”全能”と錯覚し、一国の外交の片棒を担がせようとした無知と世界政治に対する根本からの思い違いにある。

これらの経緯を見るに、どうやら金正恩という青年は世界的にこの年代に特質化した!”オタク”的性格を色濃く宿しているやも知れぬという意味で、きわめて”イマ的”と言える。

そしてこのオタク的という、つまり自分のみがあって他者が希薄というありようは、時に恐ろしい局面を展開する。

それは今回のミサイル騒動のことではない。

私はこのことを北朝鮮通の韓国人知識人のコメントによって知って驚いたのだが、金正恩は最高指導者になって間もなく、平壌近郊に徘徊するコッチェビを総”シュクセイ”したという。

これはテレビでのコメントだったのでその”シュクセイ”という言葉が「粛清」であるのか「粛正」であるのかは判然としなかったが”シュクセイ”という言葉の響きにはあの忌まわしいアウシュビッツの大量虐殺が亡霊のごとく立ち上がる。

もしこれが粛正、つまり一定の方向に叩き直す、でなく粛清、つまり処分(殺戮)であるとするなら、これは今回の北朝鮮のミサイル問題以上の今世紀の大問題と言って過言ではない。

だが北朝鮮異端視という風潮の中で、この忌まわしい発言はいとも簡単にスルーされ、その発言後も問題とされることもなかった。

この件に関してはマスコミ報道もなければ、不思議なことに今日いかなる情報も網羅するネットであらゆるキーワードを入れても、この件は立ち現れない。

中にはコッチェビ皆殺しというキャッシュだけ残っていて、それを開こうとすると、時間切れで削除されましたというのがあったりする。

もし仮にその韓国知識人の発言が事実であるとするなら、とうぜんネットには情報が少なからず載っているはずだが、まったくないところを見ると、その発言自体が虚偽であるのか、あるいはサイバー操作によって北がせっせと削除しているという可能性も考えられなくもない。

一級のプロテクトをかけているサイトにもサイバーテロを仕掛けることが出来るわけだから個人ブログを削除することなど朝飯前だろう。

この平壌コッチェビ”粛清”問題。

ミサイル問題という自分の保身にかまけ、他者(救われぬ弱者)の悲劇にまで神経と想像が及ばないとしたら、これもまたオタク的ニッポンの悲劇に他ならない。

そんな忌まわしい想像に駆られながらふと思うのは同じ金正恩が制定した国家による秀才少年の育成である。

つまり国各所から秀才の少年が集められ、英才教育を施すという国家事業だが、その選民事業を遂行する裏で、かりに国家の為政犠牲者に他ならぬ浮浪少年少女を”処分”しているとするなら、この”オタク”という三文字が狂気の様相を帯びる。

金正恩がそういった”狂気のお坊ちゃま”でないことを、このニッポンに数少ない”北朝鮮ファン”の私としては願うばかりである。

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コッチェビ報道で以前話題になったクローバーを食べる女性(20代)で、その後餓死したと言われる。

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音楽部門の英才教育の子ら。


     

 

2013/04/09(Tue)

アメリカの困ったフェアープレー精神。

今回の北朝鮮問題。

不謹慎な言い方だが、今回の件、なぜか私の頭に去来するものは危機情勢より”若さ”というものの持つ馬力と淀みのない行動力というものである。

金正恩はまだ30歳になったばかりで最高指導者になったのは20代。

日本で言えば草食系男子真っただ中ということになる。

しかしその行動力には童顔に似合わず肉食系の貪欲がうかがえる。



だがまたこの”窮鼠猫を噛む”を彷彿とさせる恐れ知らずとも言える振る舞いには、いわるる幼少のころから純粋培養的に皇帝教育をされた人間の全能感もちらつく。



北朝鮮の専政と独裁のありさまを見ると、最高指導者のもとに生まれた男子というものは周りの者すべてがへびこつらう環境の中で幼少のころから”裸の王様”に陥る危険性は十分にあるわけだ。

その裸の王様がそのまま成人し、人民を率いる立場になったというのが金正恩のひとつの姿であるとするなら、ここには常人にはあり得ない全能感が身体化しているとも考えられる。

かりにそのような全能感を持ちながらも、自らの世界内における立ち位置を客観視し、先を読みつつウォー・シミュレーションゲームを展開し、その落とし所も考えているとするなら、これは相当のタマである。



そういう意味では自分の頭上に爆弾が炸裂するリスクをさっ引けば、アメリカの出方も含め、今後の成り行きは大変興味深い見ものだ。



その逆にアドレナリン過多の”若者の怒り”というような刹那的感情の高ぶりが全能感とあいまって国家国民を道連れにするのであれば、こんな皇帝を抱く国民はたまったものではないわけで、よもやそのような感情過多の為政に陥っていないことを願う。



しかし前にも書いた記憶があるが、世界政治をきわめてニュートラルに眺めるなら、金正恩が怒り狂うのは決して異常な人間感情ではない。



小さなニュースだが、アメリカは今回の件で北の蜂起を刺激しないために今月予定されていた大陸間弾道弾ミサイルの実験を延期したという。



こんなことを何の論評も加えず当たり前のように流す日本のマスコミも公平感というものが麻痺している。



思うに今回の問題は北が長距離弾道ミサイルの実験をしたことに端を発している。

その実験を糾弾するかたちで経済制裁が加えられ、おまけに海外の北の資産を凍結するという他人の懐まで手を突っ込むような、ある意味で越権行為をアメリカは行っているわけだ。



そのアメリカは今月もそうであるように大陸間弾道弾ミサイル(北も射程距離に置いた)の実験をごくあたりまえのように恒常的に行っている。

そういう実験に対し、かりに北にアメリカの資産があればそれを凍結するというようなことを北やったらどうなるのか。

今回アメリカのやっていることはそういうことだろう。

若い者の血がカッカッと燃えたぎるのもわからぬではない。



話はとつぜんあさっての方に飛ぶがこういう自分勝手な国(というよりアメリカ企業連合)が提唱しているTPPに日本は参加を表明したわけだ。


だがこのTPP参加も北や中国の脅威の防波堤としての日米安全保障条約の弱体化を恐れての表明でもある。



今日と昨日の出来事は戦争危機と経済がスパイラルのごとく繋がっている見本のようなものだろう。

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