Shinya talk

     

 

2020/02/29(Sat)

アリリバイ作りだけに費やされた無意味な時間。(CATWALKより転載)


今終わった安倍総理の記者会見。



遅きに失した感があるがそれでもやっと表に出てきたと評価するところは評価すべきだろうと期待していたが、ただただ後味の悪いものだった。



配慮しているのか、申し合わせなのか各局、左右に設置されたプロンプターが写り込まない写角で映像を流していたが、それでもチラリチラリとプロンプターの端が見える。

それですぐさま官僚の作文を読み上げるのだなと言うことがわかる。

ただ時事通信社だけがカメラマンが意識しているのかあからさまにプロンプターごと撮影していた。



プロンプターとはアメリカの発明品で、床部に投射装置があり上部の透明板に画像や文字を映し出す装置だが、話者の側からは文字などは見えるが聴衆側には見えないと言うなかなかの優れものだ。

長い話の場合は読み上げる箇所だけが色付きになり移動するのでそれを目で追って話すということもできる。



首相は左右に設置したプロンプターに映し出される文章をあたかも自分の言葉のように長々と読み上げる。

言わばカンニングである。

学校の試験ではこうしたカンニングは罰則が与えられるが政治家にそういった罰則はない。

ひとつでも事足りるのだが、左右にプロンプターが置かれているのは演説などは左右の聴衆に顔を向けながら話すと言う演説の基本があるからだ。

だが広く聴衆の顔を見ながらはジェスチャーだけで左右のプロンプターに視線を移すだけなのでまるで首ふり人形のようである。

韓国の大統領や台湾の総統が記者会見のおり、カンニングではなく自分の言葉で話していたのとは対照的だ。



一瞬このプロンプターが故障し、カンニング文が出てこなくなったらとうとうとしゃべっている彼は相当うろたえ、支離滅裂になるのではないかと思った。



質問に入ると左右のプロンプターは下げられ、質問ではあらかじめ根回しをした5名の記者をあたかもアトランダムに選んだかのような演技で指名し、今度は卓上に置かれたモニターに流れる用意された原稿を読み上げる。


あまりに長い前段の話と比べ、質問時間は極めて短く、割り当ての5名の記者に定形質問だけをさせて時間が来た、と揚げ足を取られる前にサッと引き上げる。

全体に費やされ時間は質問を含めてたったの36分。

こんな国難会見で「時間がまいりましたので」の時間とは一体何なのか。

この国難より重要な案件がその後に控えているとは考えにくい。

あるいは6時半を過ぎているので食事に入るということなのか。



本当はこの会見は3時間4時間と時間を費やしても足りないくらいだ。

この間定形質問に当てた時間は10分程度、回答(カンニング)にあてた時間はわずかその半分の5分程度。

ふざけた会見である。



予定された質問ではなく、国民が聞きたいことに全部耳を傾け、余すところなく答えるというのが記者会見のあるべき姿だが、長々と自己弁護をしてさっさと引き上げ、国民と向かい合ったというアリバイだけを作る。



卑怯である。



首相はプロンプターを見て、政治記者連中もただ黙々とパソコンに向かい合っているだけ、というこの日本独特の薄気味悪い予定調和会見に異議を唱えるかのように遠くの女性記者が「まだ質問があります」の声を上げ、まだ他の記者も手を上げているが、予定調和以外の質問を避けるかのように側近が「時間がまいりましたので」とアナウンスし、件の女性が「質問にちゃんと答えないんですね」と言うと首相はチラリと声の方を見ただけで、サッサと降段。



国民への想いより自己保身だけが透けて見える後味悪い時間だった。



そしてこれも官僚が作った文言だが、彼は締めの言葉に大変な間違いをおかしている。



最後に、と言って述べた「ダイヤモンドプリンセス号の中で粉骨砕身で働いていただいた方々に心から敬意を申し上げたい「という趣旨の文言だが、ここは



「最後にダイヤモンドプリンセス号でお亡くなりになられた諸外国のそしてわが国の方々に心よりご冥福を申し上げたい」



とすべきところである。



こう言った場面ではまず最大の犠牲者となった死者を弔うと言う定石すらわかっていない。



これは文書を作った官僚の失策だが、そのまま読んだ首相の失策でもある。



ここまで来たら笑える。



流石に吉本興業の舞台に立ったことのある人だなとここだけは評価した。